老いぼれエンジニアには隠す爪がない

この時代に老いぼれを見たら、「生き残り」と思え…!

原発推進派の旗色は、目に見えて悪い


3.11の時にはいろいろ議論もあったものの、あのアツい議論はどこへやら。しれっとこんな話が出てきている。この話をするためだけに小渕優子さんが経済産業大臣にさせられたのだな、と思わずにはいられない。

いままで、小渕議員を「女性の味方」と支持してきた層は、ガックリ来たのではあるまいか。自分の子らが生きる未来を放射能まみれにしかねないような発言を、彼女は平気でするようになってしまったのである(ま、経済界から言わされている、というだけに過ぎないだろうけど)。

で、私自身のスタンスも3年の時を経て少し変わった。いまは「ソフト反原発」である。ハッキリ、再生可能エネルギーや、燃料電池発電などで原子力は代替可能である、ということがわかってきたからである。

まず、あれほど大騒ぎされたピーク時電力だが、何事もなく乗り切った。まあ、火力発電所をたたき起こしたりいろいろあったんだろうけど、まあフクイチの大騒ぎのことを思えば、比較の対象にすらならない。

そして、「安い安い」といわれてきた原子力がとても高いということもわかった。福島第一原発の賠償費用は4兆円とされる。今後、廃炉に向かってどれだけお金がかかるか見当もつかない。この費用は現在税金でまかなわれているが、電力会社の発電コストとして計上すれば、東電は間違いなく倒産する。それくらいトンデモない金額がかかっている。

ここまでシビアな事故が起こる可能性はどれくらいあるのかは全く不明だが、飛行機が落ちるよりはずっと高いのではあるまいか。だって、日本には数十機しか原発がないのだ。なので、今回かかった費用を危険率を鑑みて、全国の原発でプールしていかねばならない。これを電気代に上乗せするとどうなるだろうか。

結果は火を見るより明らかで、原子力発電というのは持続可能な発電技術ではなかったのだ。これは、3.11の事故でようやく判明したことである(なので、3.11以前から反原発だった人たちに、したり顔で講釈を垂れられるのも少し違和感がある)。

この事実を厳正に受け止めて対応していかなければならない。

多くの人はこのことに気付きつつあり、上記小渕大臣の会見に対するネガティブコメントは大変多い。

なぜ原発は持続可能な発電技術ではないのか。それは、この3年間で技術の発展が著しく起った太陽光発電・燃料電池発電・リチウムイオンバッテリーの進歩があったためである。

確かに、現在ある送発電網を利用したピラミッド型の電力供給システムは、太陽光発電や風力発電だけではまかないきれないだろう。しかし、それにバッテリーを用いたピークシフトやデマンドレスポンス、そして燃料電池を用いた高効率発電(都市ガスを用いた発電)を組み合わせることで、地域に必要十分な電力を供給できるということがわかってきた。

地産地消なので送電ロスが少ないし、燃料電池発電は場所をあまりとらずローコストである。現在、25円/kWhで10年間という契約で、Bloom Energyの「エナジーサーバー」(燃料電池発電)を使って電気を買うことができる。

25円はやや高いが、もともとこれはデーターセンターなどのバックアップ電源用途である。それに、将来再エネ賦課金などで電気代が20円を突破することもありえる。かたやエナジーサーバーは10年固定である。電気を安定的に消費する需要家であれば、いわば「固定金利ローン」で電気をまとめ買いするみたいなものと考えればよい。

燃料電池のコストもますます下がるし、バッテリーのコストもTeslaのギガファクトリーが出来れば現在の3割程度まで下がるといわれている。ますます、原発は「要らない子」となる。

経済産業省が今考えるべきは、この「持続不能な発電手段」として生まれてしまった原子力発電というものによる負債を真摯に受け止め、ソフトランディングさせる手段である。「臭いものに蓋」で原発事故がなかったことのように風化させ、こっそり再稼動させ、自分が政権の座にあるうちだけは日立や東芝からの莫大な献金をもらえればいい、というような発想では、困るのだ。