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だいぶつのブログ

いまさらなことをいまさらに語ります

太陽光ビジネスは補助金ありきの不健全なビジネス?

孫正義率いるソフトバンクの電力会社、SBパワーが頑張っている。


ソフトバンク、太陽光発電の電力を「買取価格+1円」で買い取り 募集スタート | ニュース | 環境ビジネスオンライン

この件に関して、よく聞かれる「補助金目当ての不健全なビジネスだ!」という批判が全く的外れであることをこのエントリーでは説明する。

Yahoo!BBも最初は批判の嵐だった

日本のブロードバンド通信の転換点になったともいえるYahoo!BB。これをはじめたのも孫正義だった。しかし意外なことに、当時は批判だらけだった。いままでの数倍~数十倍の通信速度を、いままでの半額で提供するというこのサービスが「つながらない」「サポートが対応悪い」といった理由で散々叩かれていた。

当時、日本には「ベストエフォート」という概念があまり普及しておらず、「お金を払ったからには同じサービスを受けられないとおかしい」という考えが一般的だった。

この思想に基づいてNTTなどが通信サービスを半独占状態で仕切っていたものだから、コストがとても高くついていたのだ。これに、アメリカ流の「この程度の値段でこの程度の性能なら、まあいいか!」という「ベストエフォート」の思想を取り込むことで、大幅なコストダウンと性能アップを両立したわけである。

私のようなものにとってはウェルカムだったが、長く日本の「コミット済みサービス」に慣らされた人(レイトマジョリティ)にとって見れば異質だったのだと分析する。

賦課金がないとビジネスとして成立していないという批判の的外れさ

電力会社(大手も新電力も)太陽光は42円とか38円とかで買い取らないといけないが、他の電力利用者から再エネ賦課金というのを徴収して、回避可能費用(8~12円くらい)を超えた分は電力会社に払い戻し(賦課金)がある。

つまり、42円のうち30円くらいは補填されるから、実質は8~12円くらいで仕入れたことになる。こんなのビジネスとはいえない、卑怯だ、というわけだ。

しかし考えてみよう。あなたがたとえば東電に太陽光の電気を売ったとしよう。その時、東電も賦課金をもらっているのだ。SBパワーに売ったから再エネ賦課金を取られるのではない。いずれにせよ再エネ賦課金は取られるのである。おまけに、プレミアムの+1円はSBパワー自身負担しているのだ。

そして、この賦課金(回避可能費用)というのは絶妙で、電力会社は再エネを買い取る義務があるため、これをあまり高くすると電力会社自身が困るという寸法になっている。

しかし、あまりSBパワーに儲けられるのは嫌なので、新電力は託送料金(3円程度)というのを徴収される。さらに安定電力をSBパワーが供給できなかった場合「アンシラリー料」という名目で莫大なペナルティを取られる。

つまり、プレミアムの1円+託送料金の合計4円、SBパワーのほうがコストが安い。絶大な独占権を握る東電より、である。この4円は付加価値であり、立派にビジネスとして成立している。しかもアンシラリー料を払わなくて済ませるための電力託送システムは完全に自前だ。(電力会社のそれは大半が税金で作られたもののはずだ)。

電力会社も何もしなくても託送料金の3円をもらえるのだから損はしていない。

通信サービスに関して、絶大な独占権を握るNTTの牙城を崩すのは不可能かに思われたが、それを成し遂げたときの手法ととても似ている。

損する人は誰もいない

上記の通り賦課金があるので、再エネを買い取れば買い取るほど電力会社は儲かる構図になっている。なので、客を取られたくはないはずだ。

しかし、SBパワーに乗り換えたからといって、電力会社は3円の託送料金はもらえるわけだから、損するわけではない(利益を失うだけだ)。

一方、電力を使う一般人も損はしない。むしろ、SBパワーは工場やオフィス、大型マンションなどに安価な電気を提供するので、電力料金は下がる。

再エネ賦課金は、何度も言うがSBパワーが何もしなくても下がることはないのだ。これは、日本全国に存在する太陽光発電所の総量によって決まるのだから。ならば、その分電気代が下がったほうがいいと思わないだろうか?

大手電力は独占の地位をいいことに、そんな利益は全部ポッケに入れてしまう。NTTの100円公衆電話が返さなかったお釣りや、結局1円も返ってこなかった加入権の72,000円はどこに消えたのだ?大手電力も儲けた賦課金はポッケに消える。おまけに原発事故の賠償は国になすりつける。

それを一般庶民に還元しようというのは、いいことではないのか?これは立派なビジネスである。

四方誰も損をしない。どうして批判されるいわれがあるのだろう?

大手電力も賦課金で潤っているというあまり誰も指摘しない事実

上記の通り、大手電力も賦課金で潤っている。なぜそれを大々的に言わないかといえば、もちろん原発だ。FIT(再エネ固定買取制度)は割といい政策だったのだ。技術の進歩で太陽光発電所が安価になり、グリッドパリティに近づいているからだ。10年前のドイツなどのFITの失敗と同列に論じることは出来ない。当時に比べ、コストは半分以下になっているからだ。

そして、大手電力は結果として賦課金でかなり儲かっている。困ったことに、原発をやめても問題ないくらいに。そんなこと、これまで必死に原発を推進してきた大手電力には、口が裂けてもいえない。

大手電力の持つ電力インフラの大半は税金で出来ているという事実

送電線や変電所などの電力インフラは、JRの鉄道と同じくほとんどが税金で出来ている。なので、所有者は事実上国民である。

税金というのも、電力という社会インフラを維持発展させるための補助金のような性質であることはいうまでもない。だから、補助金を否定すれば大規模な電力インフラの存在自体を否定することになる。新幹線も存在し得なかった。

再エネがもし本当に必要なものであれば、そこに補助金を投じるのはなんらおかしなことではない。

最終目標は一般向け電力販売

2016年に一般向けの電力販売が解禁される。とはいえ、これは法律上だけの話であり、実際にはそう簡単にはいかない。

託送料金は一般向けにはさらに高くなるというウワサである。しかも、一般家庭は工場などに比べ消費電力量が少ないわけだから、スケールメリットで相殺することも出来ない。だから、すぐに新電力が普及するというわけには行かないだろう。

しかし、発送電分離がなされるまで何もしないでいては、いつまでたっても電力自由化など実現しない。大手電力にバンバン圧力をかけていく必要がある。九電の接続保留といった嫌がらせや託送料金の値上げなど、独占権があるのをいいことにさまざまな難題が登場することは容易に予想できる。

しかし、最終的には勝てると見込んでいるのだろう。ボーダフォンの買収もそうだったし、アリババへの投資もそうだった。その時点では誰もが眉をしかめるような判断をし、それが的確に実現しているのだ。

そして、彼の判断は誰も不幸にしていない。明らかに、日本、いや世界の技術の進歩に貢献している。これは重要である。

稀代の10年先を読む男の判断である。生暖かく見守るべきであろう。