老いぼれエンジニアには隠す爪がない

この時代に老いぼれを見たら、「生き残り」と思え…!

直感と理性のバランス

孫正義がなぜスゴいと思うか。アリババへの投資で日本ではダントツの大金持ちになったというのももちろんあるのだけど、それ以前の問題として、彼の行動には裏づけがないように見えることが多い。

たとえば、1年ほど前に彼は福岡のM-TOWERというビルにBloom Energyという会社の「エナジーサーバー」といわれる燃料電池発電機を導入した。日本初の事例ということでちょびっと話題になったが、話題にしている人の大半が「これはどういう理由で、どういう投資対効果で導入されたものなのか」ということが全く理解できていなかった。

人によれば「孫正義は何でも新しい物好きだからに過ぎない」とかいう批評を下してしまったりもする。まあ、それもある程度事実なんだろうが、ちょっと違う気がしている。

俺は今仕事で燃料電池発電機をどうこうしようかと構想している最中だ。やろうとすることは全部、孫正義に先にされている。

すごいことを続々とするのだが、Yahoo!BBにしても到底元が取れるとは当時の人は思わなかっただろう。ネット銀行ビジネスにしてもそうだ。手数料をほとんど取らない銀行が儲かるのだろうか?SBパワーによる太陽光発電ビジネスにしてもそうだ。

なぜスゴいのか。彼の中では、その判断は正しいに決まっているのだ。いろんな会社で働いている人がいると思うが、だいたいトップは「用心深い」ことが多いと思う。むろん、孫正義も彼なりの意味で「用心深い」のだと思うのだが、どこかでたがが外れることがある。

企画の仕事をしている人なら、誰でも一度は「その企画の根拠データを示せ」とか言われたことがあるだろう。「リスクはないのか?」とかも。でも、リスクのない事業なんてないし、根拠データで100%正しいと示せる企画なんてすでに誰かがやってますよと。ある程度のるかそるかがあるから企画なんだよと思ったことがあるだろう。

まあ、大半の「企画マン」はそういう風潮に飲み込まれて、データ集め・小奇麗な資料作りが得意なだけのサラリーマンに成り下がってしまう。内容はどこかで見たようなものの寄せ集めで、新しさなどない。

俺は、前の会社に入社したときのパソコン事業部の企画部長(事業部長兼務)に研修で教えてもらった「企画の『企』の字は『企てる』」というフレーズが、いまだに頭にこびりついて離れないような人間だから、そんな風に流されるのは嫌だと思っていた。

IT技術者への夢破れ企画マンになれと言われた以上、企画マンとしてちゃんとやっていきたいと思っていたし、今でもその思いに変わりはない。ただ、方向性としてはだいぶシフトし、IT技術を軸に製品全体のライフサイクルを見れる「ITアーキテクト」が自分の天職であると最近では思っている。

それを体現しているのが孫正義なので、すごいと思うのかもしれない。

俺もまだまだ、これからだと思いたい。