老いぼれエンジニアには隠す爪がない

この時代に老いぼれを見たら、「生き残り」と思え…!

量子コンピューターは断じてアナログコンピューターではない

大昔に、アナログコンピューターというものが存在したそうです。

正確には「アナログ計算機」というべき様なものであり、計算尺を電気仕掛けにしたようなものだったと私は理解しています。

そして、最近ムーアの法則が限界を迎えつつある中、脚光を浴びている量子コンピューター。この量子コンピューターが「アナログコンピューターである」というトンデモ説を語るお年寄り(というにはもうちょっと若い)人が増えてきているように思います。

日経コンピューターのシニア記者が書いたと思しき記事にもそのような記述があったようで、ますますお年寄りの誤解に拍車をかけることになってしまいました。

この誤解を正すには、まず「コンピューターとは何ぞや」ということを書かなければなりません。

私が「コンピューター」というとき、それは「ノイマン型コンピューター」を指しています。多くの人もそうだと信じます。そして、ノイマン型コンピューターは当然デジタルコンピューターであり、「アナログ型の」「ノイマン型コンピューター」など存在しません。

ノイマン型コンピューターの特徴は「チューリング完全性」です。完全なチューリングマシンである、つまり「ありとあらゆる計算を完全に実行できることが保証されている」ことが特徴です。

アナログコンピューターは当然チューリング完全ではありません。したがって、アナログコンピューターはコンピューターとは言えません。

ところが、量子コンピューターを語るときにその定義が、ちょっと変わってしまいます。なぜなら、量子コンピューターは(おそらく)チューリング完全ではないからです。

かといって、「アナログコンピューター」=「量子コンピューター」と結論してしまうのは早計に過ぎます。例えば、「東京生まれではない」からといって、「北海道生まれの人」と「九州生まれの人」が同郷である、と言えるでしょうか?

 

言い換えると、「アナログコンピューター」と「量子コンピューター」の類似点は「チューリング完全ではない」という点のみであり、これを持って「量子コンピューターはアナログコンピューター」などという暴論を認めるなら、血液型がA型以外の人は皆同じ血液型と言っているのと同じことです。

ただ、量子コンピューターチューリング完全ではありませんが、アナログコンピューターと異なり計算単位を「量子」=「離散的な値」として持つことはほぼ間違いないので、どちらかというと「デジタル」な計算機です。とはいえ、現在一般的に浸透している「コンピューター」=「ノイマン型コンピューター」ではないことは明らかなので、「デジタルコンピューター」と断言もできません。

 

わかりにくい概念がゆえに、我田引水の理論を展開する人が多いのもやむをえませんが、論理的に考えればわかることだと思っています。