私が会社を作った頃、大家業というのに憧れていて、色々と調べたことがあります。
結論から言うと、大家業で儲かるか儲からないかは 運です 。
その理由を考えてみたいと思います。
例えば、1億円の物件で、表面利回りが5%のものがあったとします。
あなたは運良く1億円を無利子で借りることができ、その物件を買い、10年間運用して売却したとします。
売却価格は7000万円としましょう。
この場合、毎年の家賃収入は1億円x5%=500万円です。(※満室の場合)
10年間なので5000万円です。
これに物件の売却価格7000万円を足します。すると1億2000万円です。
借りていた1億円を返済すると、手元に残るのは2000万円です。
10年で、2000万円も儲かったよ!となりますか?
さて、上記の話は簡略化のために、ローンの利子や修繕金、空室率のことは一切考慮していません。
不動産取得税や固定資産税も意外とがっぽりやられます。
1億円を無利子で借りることも不可能なら、10年間ずっと満床というのもありえません。
ローンの返済は経費にならないため、月々のキャッシュフローがマイナスであっても所得税も取られます。(経費計上できるのはローンの金利分だけで、それにプラス減価償却がちょびっとだけ取れます)
10年で30%の価格下落というのも、それほど悪い数字ではありません。
その甘い仮定でもたったの2000万円しか儲けられないのです。
実際の平均パフォーマンスを真面目に計算したことはありませんが、 良くてトントン といったところになるのではないでしょうか?
乱暴にまとめると、家賃収入はほぼ全額が手数料や税金、不動産の価格下落(減価償却)などに消えます。
なので、それらを考慮しないようにすれば、とどのつまり 10年間で建物の価値が上がったか下がったか以外にはほぼ意味がない ということになります。
10年間売れない、上がるか下がるかわからない物件を買ったのとほぼ同義です。
米株投信に投資すれば、10年間で毎年3%複利で増えます。
複利のパワーを考慮すれば、1億円は10年で約1.3倍になります。
3000万円の儲けです。
※ ちなみに、3%というのはかなりコンサバティブな見積もりであり、過去10年で見ると米株は年平均5〜6%程度のパフォーマンスです。
「たったの7000万円でしか売れないのがいけないのだ、首都圏はむしろ不動産が高騰しているから、2億円くらいで売れるはずだっ!」
はい、そういう人もいるでしょう。
だから最初に言ったとおり、不動産投資は「運ゲー」だということです。
うまく不動産価格が上昇して売り抜けられれば勝ち、下がれば負けのギャンブルです。
なので、YouTubeなどで不動産で◯◯億円儲けた!とか言ってやっている人は、たまたま運良く儲かっただけなのです。
100人くらい同じような投資行動をしている人がいて、たまたま生き残った数人のうちの一人というだけです。
だから、彼らの方法には再現性がありません。再現性があれば、世の中不動産成金で溢れているはずです。
彼らのYouTubeに課金するのは単なる養分になりに行くことに過ぎません。
自身の方法に再現性があると思えば、YouTubeなんかやっている間にどんどん実践し、ウォーレン・バフェットみたいな大金持ちになっているでしょう。
個人投資家のカリスマであるBNF氏も、講演会やYouTubeのたぐいはほぼやっておられません。
奇しくも、YouTubeで養分集めに勤しんでいるという事実が、再現性のない方法で不動産で儲けたという「過去の栄光」を元にして、再現性のあるYouTubeの「養分」から吸い上げようとしている、という行動を是認しています。
※ 有料チャンネルをやっておらず、単に情報発信だけしている人がいれば、それは優良な配信者かもしれませんが、サロンを開いている人は全員が養分目当てです。
ということで断言しますが、不動産投資はギャンブルです。しかも、儲かる確率がかなり低く、損する確率のほうがずっと高いギャンブルです。
何より、資産をすぐ換金できないのが痛いです。
投信であれば、例えばブラックマンデーで半値になったりした場合、半値撤退ということが可能です。
不動産の場合、半値撤退すら許されず、自己破産まで追い込まれます。
どうか、ネットに転がっている甘言に惑わされませんように。
補足
不動産バブルが継続的に続いていなければ不動産投資は全くオススメできません。
情報が取りやすくなったからこそ、本当に儲かる不動産には多くの人が群がっていて、素人が入り込める隙などありません。
その隙を狙って、ゴミのような不動産商品を売りつける輩が跋扈しているのが現状です。